詩をひとつ。
だいすきな、だいすきな
谷川俊太郎さん。
読むたびにどうしても涙が出てきてしまう。
なぜ?
谷川さんのいる日本に生まれ、
その詩の世界に触れながら育ったことは
私のしあわせのひとつ。
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「かすかな光へ」 谷川俊太郎
あかんぼは歯のない口でなめる
やわらかいちいさな手でさわる
なめることさわることのうちに
すでに学びがひそんでいて
あかんぼは嬉しそうに笑っている
言葉より先に 文字よりも前に
波立つ心にささやかな何故?が芽ばえる
何故どうしての木は枝葉を茂らせ
花を咲かせ四方八方に根をはって
決して枯れずに実りを待つ
子どもは意味なく駆け出して
つまずきころび泣きわめく
にじむ血に誰のせいにもできぬ痛みに
すでに学びがかくれていて
子どもはけろりと泣きやんでいる
私たちは知りたがる動物だ
たとえ理由は何ひとつなくても
何の役に立たなくても知りたがり
どこまでも闇を手探りし問いつづけ
かすかな光へと歩む道の疲れを喜びに変える
老人は五感のもたらす喜怒哀楽に学んできた
際限のない言葉の列に学んできた
そしていま自分の無知に学んでいる
世界とおのが心の限りない広さ深さを
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